「売上や経費はきちんと管理したほうがいい」と分かってはいても、Excelの画面を開いた瞬間に手が止まってしまう——そんな経営者の方は決して少なくありません。関数もピボットテーブルも使いこなせない、ファイルがどこにあるか分からなくなる、結局は通帳と請求書の束を眺めて終わる。実際、中小企業や個人事業主の現場では、数字の管理が「経理担当者がいないから後回し」になりがちです。
しかし、記録や管理の本質はExcelを上手に使うことではありません。「必要なときに、必要な数字がすぐ出てくる状態」をつくることです。そのための方法は、紙のノートでもスマートフォンのメモでも、クラウドサービスでも構いません。
この記事では、Excelが苦手な経営者の方でも今日から始められる、シンプルな記録・管理術をご紹介します。資金繰りの把握や融資の相談にも直結する内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

なぜ経営者に「記録」が欠かせないのか

なぜ経営者に「記録」が欠かせないのか

記録をつける目的は、税務申告のためだけではありません。経営者にとっての記録は、会社の状態を判断するための「計器」です。
飛行機にたとえるなら、高度計も燃料計もない状態で操縦しているようなもの。今どれだけの現金が残っていて、あと何か月もつのか。どの取引先の入金が遅れているのか。こうした数字が頭に入っていなければ、判断は勘に頼るしかありません。

記録があることで得られるメリットは、大きく次の3つです。

・資金ショートを防げる
数か月先の現金残高が見えるため、早めに手を打てる
・無駄なコストに気づける
使途不明の支出や、惰性で続く契約を発見できる
・第三者に説明できる
金融機関・税理士・取引先へ、根拠のある数字を示せる

特に3つ目は見落とされがちですが、非常に重要です。融資や取引の相談をする際、数字を即答できる経営者は信頼されます。

Excelでつまずいてしまう3つの理由

Excelでつまずいてしまう3つの理由

「Excelが苦手」と感じる理由を分解すると、実はスキル以外の原因が大半です。

① 最初から完璧な表を作ろうとしている

項目を細かく分け、関数を入れ、グラフまで作ろうとして、作業量に耐えられず途中で挫折するパターンです。

② 続けるための仕組みがない

「気が向いたら入力する」では必ず止まります。入力のタイミングが決まっていないことが原因です。

③ ファイルが増えて管理できなくなる

「売上管理_最新.xlsx」「売上管理_最新2.xlsx」が乱立し、どれが正しいのか分からなくなる。よくある失敗です。

つまり問題は操作スキルではなく、設計と習慣にあります。ここを変えれば、Excelが苦手なままでも管理はできます。

Excelが苦手でもできる5つの記録・管理術

Excelが苦手でもできる5つの記録・管理術

① 「1シート1テーマ」に徹底的に絞る

1つのファイルに何でも詰め込むのをやめ、「日付・項目・金額・区分」の4列だけから始めてください。関数は使わなくて構いません。合計が必要なら、電卓で出しても十分です。まずは「入力して残す」ことだけを目標にします。

② 入力の手段は何でもいい

外出の多い経営者であれば、スマートフォンのメモアプリや音声入力でも問題ありません。「9/19 接待 8,000円 A社」とだけ残しておき、あとでまとめて転記すればよいのです。レシートをその場でスマホ撮影し、フォルダに放り込むだけでも立派な記録になります。重要なのは、その瞬間に情報を逃さないことです。

③ 会計ソフト・アプリの自動化に任せる

クラウド会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードの明細が自動で取り込まれます。手入力そのものが不要になるため、Excelが苦手な方ほど恩恵が大きい選択肢です。月額数千円のコストはかかりますが、手作業の時間と入力ミスを考えれば十分に見合います。

④ テンプレートを使い回す

ゼロから表を作る必要はありません。会計ソフトや公的機関が配布している無料テンプレートを使えば、項目を考える手間そのものが消えます。自分に合ったものを1つ決めたら、あとは毎月コピーして使うだけです。

⑤ 「週に15分」の記録タイムを固定する

もっとも効果があるのがこれです。たとえば毎週金曜の夕方15分と決め、カレンダーに繰り返し予定として入れてしまう。毎日やろうとすると挫折しますが、週1回なら続きます。1週間分をまとめて処理すれば、月末にまとめて数時間格闘する事態も避けられます。

続かない人のやり方 続く人のやり方
思い立ったときに入力 曜日と時間を固定する
完璧な表を目指す 4列だけの簡易表から始める
すべて手入力 自動連携・撮影で手間を減らす
ファイルを都度作る テンプレートを使い回す

最低限おさえておきたい記録項目

最低限おさえておきたい記録項目

細かい管理は後回しでも構いません。まずは次の4つを押さえてください。

・現金・預金残高/全口座の残高合計/週1回
・売上と入金予定/請求済み・未入金の一覧/週1回
・支払予定/仕入・家賃・給与・借入返済など/月1回
・資金繰り予定表/3か月先までの入出金見込み/月1回

この4つが揃うだけで、「あと何か月、現金がもつのか」が把握できます。これは経営判断における最重要の情報です。

記録が「資金調達」で効いてくる理由

記録が「資金調達」で効いてくる理由

日々の記録は、資金調達の場面で大きな差となって表れます。
金融機関やファイナンス会社が事業者を評価する際、決算書だけを見ているわけではありません。直近の売上推移、入出金の状況、経営者が自社の数字を把握できているかといった点も判断材料になります。
「先月の売上は?」「主要取引先からの入金サイクルは?」——こうした質問に、資料を探さずに答えられるかどうか。ここで詰まってしまうと、審査に必要な書類の準備にも時間がかかり、資金が必要なタイミングに間に合わないという事態になりかねません。
逆に、簡易的でも記録が残っていれば、必要書類はすぐに揃います。手元資金が薄くなる前に相談でき、選択肢の多い状態で資金調達を検討できるのです。記録は、経営の自由度を守るための備えでもあります。

まとめ

まとめ

Excelが苦手でも、経営に必要な記録・管理は十分に実現できます。ポイントを整理します。

・記録の目的はExcelの習熟ではなく、必要な数字がすぐ出る状態をつくること
・つまずく原因はスキルではなく「完璧主義」「習慣化の不足」「ファイルの乱立」
・4列の簡易表から始め、関数は使わなくてよい
・スマホのメモ・写真・クラウド会計の自動連携で手間を減らす
・週1回15分の記録タイムを固定し、テンプレートを使い回す
・現金残高・売上と入金予定・支払予定・資金繰り表の4つを最優先で
・日々の記録は、資金調達をスムーズに進めるための土台になる

まずは今週、口座残高をメモに書き出すところから始めてみてください。それだけでも、見える景色は変わります。

ファンドワン株式会社では、事業者様向けのビジネスローンを通じて、中小企業様・個人事業主様の資金調達をサポートしております。「記録を整理してみたら、思った以上に資金繰りが厳しかった」という段階でも構いません。経験豊富なスタッフが状況をうかがい、最適なプランをご提案いたします。資金面でご不安がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 紙のノートでの管理でも問題ありませんか?
+
A. 続けられるのであれば問題ありません。ただし、確定申告や融資申込みの際にはデータでの提出を求められる場面があります。当面は紙で記録し、月末にまとめてデータ化する、あるいは税理士に渡す運用にしておくと安心です。大切なのは形式より、記録が途切れないことです。
Q2. 会計ソフトは本当に必要でしょうか?
+
A. 取引件数が少なければ簡易表でも十分ですが、月の取引が数十件を超えるようであれば導入をおすすめします。銀行口座やクレジットカードとの自動連携により入力作業そのものが減り、Excel操作が苦手な方ほど効果を実感しやすくなります。
Q3. 過去の記録がまったくありません。どこから手をつければよいですか?
+
A. 過去にさかのぼる必要はありません。今月から始めれば十分です。まず直近の口座残高を書き出し、そこから入出金を記録していきましょう。3か月分たまれば、おおよその傾向が見えてきます。過去の整理は税理士に相談するのが現実的です。
Q4. 資金繰り表はどう作ればよいですか?
+
A. 最初は「月初残高+入金予定-支払予定=月末残高」という1行の計算式で構いません。これを3か月分並べるだけで、資金がいつ不足しそうかが把握できます。詳細な様式は日本政策金融公庫や商工会議所が無料で公開しているものを利用すると便利です。
Q5. 忙しくて記録の時間が取れません。
+
A. 時間が取れないのではなく、時間を確保していないケースがほとんどです。週15分をカレンダーに固定し、他の予定と同じ扱いにしてください。それでも難しい場合は、レシートを1つの箱に入れておき、月1回まとめて処理する方式に切り替えるだけでも状況は改善します。
Q6. 記録をつけていると、融資審査で有利になりますか?
+
A. 記録そのものが直接の審査項目になるわけではありませんが、必要書類を速やかに提出できる、事業状況を明確に説明できるという点で、審査がスムーズに進みやすくなります。結果として、急を要する場面でも余裕をもって対応できるようになります。