コロナ情勢はほぼ鎮静化したように思えたところ、5類移行後は感染者数が再び上昇傾向にあります。
一時期の世界的な混乱があった時期には、国内事業者の収入源による倒産を抑制するためにゼロゼロ融資制度が創設され、多くの事業者が助けられた経緯があります。
そのゼロゼロ融資の返済がいよいよ本格的に開始され、返済負担に悩む経営者が続出しています。
実際に倒産件数も増えているので、この回ではゼロゼロ融資の返済状況や倒産の実態、対応策などについて見ていきたいと思います。

 

■ゼロゼロ融資の返済状況

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ゼロゼロ融資は実質無利子・無担保で融資を受けられるもので、多くの事業者が利用しましたが、無利子期間の3年が経過した2023年5月からすでに返済が開始されています。
企業によっては返済時期がずれ込む所もありますが、全体的には2023年7月から返済開始のピークが始まっているとされています。
現在は手厚い公的支援は打ち切られているので、各事業者は従来通り自力で経営を回していく力が求められています。
各事業者の本来の事業力が必要となるところ、残念ながら力尽きて倒産する企業が増えています。

 

■直近の倒産件数はどうなっている?

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東京商工リサーチの調査によると、5類に移行した今年5月の倒産件数(中小企業)は704件で前年と比べて34・3%増、6月は770件で前年同比41・2%の増、ゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎えた7月は758件で前年同比53・7%の増となっています。
倒産件数で言えばコロナ禍にある時期よりも増えているということになります。
業界別ではコロナ情勢の回復を受けて宿泊業などは回復傾向が強いようですが、飲食業の方面は回復が追い付いていないようです。

 

■インバウンド回復も追い打ちをかける物価高

インバウンド外国人

最近は旺盛なインバウンド需要も見られ、一部の業界には追い風が吹いているところもあります。
旅行関連の業界はその恩恵を強く受けている所ですが、逆風として物価高が事業者を悩ませています。
電気、ガスなどのインフラ利用料が高騰している他、ガソリンの値段も上がり続けています。
旅行関連ではツアーやお客さんの移動などに燃料を多く使いますし、ほとんどの事業者は電気ガスの料金高騰が本当に経営に響いていると嘆いています。
電気ガスについては国の支援策も出ていますが、ガソリン方面はトリガー条項の発動に二の足を踏んでおり、負担軽減となるかどうかは分かりません。
コロナ関連の直接の支援策が打ち切られている今、各事業者は自力で利益を上げ、そこからゼロゼロ融資の返済をしていかなければなりませんが、それが難しいことを倒産件数の増加が物語っています。

 

■倒産が増え続けるとどうなる?

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ゼロゼロ融資は信用保証協会が関与する仕組みになっているため、融資を受けた事業者が返済できなくなった場合は代位弁済を受けられます。
ただしそれで債務が無くなるわけではなく、事業者は信用保証協会に対して返済をしなければなりません。
それも叶わず倒産となった場合、信用保証協会は代位弁済した資金を回収できません。
代位弁済に要した資金は国民の税金ですので、結局は国民がその負担を被ることになります。

■倒産抑制策としてコロナ借換保証制度が創設される

ゼロゼロ融資の返済負担で苦しむ事業者が急増している事実については国も把握しています。
これに対応するためにコロナ借換保証制度が創設されています。
これは現在借りている金融機関に対する返済資金を調達するため、別の金融機関から資金を借り入れるものです。
元の融資元金融機関には一括して弁済を行い、金利負担を消滅させた上で、より負担の少ない新たな借入先に対して返済を続けていくことができます。
以下に制度の概要をまとめます。

保証限度額 1億円
保証期間 10年以内
据置期間 5年以内
保証料(事業者負担) 0.2%等

事業者負担の保証料は補助前は0.85%等であることから、制度利用によるメリットがあります。
実際の数字は個別のケースによって変わってきますが、可能であれば利用を検討しましょう。
ただし本制度を利用するには金融機関の伴走支援と経営行動計画書の作成が必要です。
経営行動計画書では自社の状況を正しく分析、把握していること、具体的な資金の使途や返済計画、収益計画などを示す必要があります。
またセーフティネット4号もしくは5号の認定を受けていることなど、売上高が一定以上減少していることも条件になります。
本制度利用に関しては各金融機関が相談窓口になり、具体的な進展が望める場合は市区町村や保証協会など関係機関との調整を取り持ってくれます。
まずは窓口相談をしたうえで経営行動計画の策定を進めることになります。

■業態を変える決断も

事業者としては倒産という最悪の結果にならないよう、経営努力を続けられていることでしょう。
物価高や売り上げの回復が追い付かないことで、精神的に糸が切れそうな経営者も多くいると思います。
倒産を避けるためには、思い切った業態の変換も模索してみましょう。
例えば印刷業を営む事業者の方が、思い切って印刷業務を扱うのはやめ、外注に出して経費を削減するという決断をしたところもあるようです。
自社では印刷前のデザイン制作などに注力することで、少ない経費で事業を回すことができるようになります。
自社の存在意義に関わるような決断も、厳しい状況下では必要なことかもしれません。

 

■まとめ

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この回ではゼロゼロ融資の返済状況や倒産の実態、対応手段となるコロナ借換保証制度などについて見てきました。
ゼロゼロ融資の返済はすでにピークを迎えており、融資を受けた事業者で無利子期間が過ぎたところは利子返済が始まっています。
しかし売り上げの回復が追い付いていない事業者も多く、返済負担や物価高の影響もあって倒産件数が増加している実態があります。
コロナ禍よりも倒産数が増えているという事実は非常に問題で、コロナ借換保証制度だけでは手弱い印象を受けます。
物価高の抑制方面ではまだ打てる手はあるはずで、事業者だけでなく国民としても恩恵があるものですから、国にはぜひ対応策を講じてもらいたいところです。