昨年から続く値上げの波は衰えることを知らず、むしろその影響は増々拡大しています。
消費者目線でも日常生活のあらゆるところで値上げの影響を受け、家計のひっ迫度合いは増しています。

事業者目線では、モノの値段上昇を受けた国民の消費動向を気にかけなければなりませんし、目先では仕入れ資材の価格上昇や燃料費の高騰なども頭を悩ませます。
本章では現在も続く値上げラッシュが経営者に及ぼす影響とその対策について見ていきたいと思います。

■予定通り2月に値上げが集中した

2023年2月のカレンダー

実は昨年の後半にはすでに2023年の早い時期に国内の値上げラッシュが起きることが予想されていました。
この予想では2月に多くの品目の値上げが集中することも指摘をされていたところです。
そしてその指摘通り、2月頭には食品類をはじめ身近な多くの製品の値上げが実施されています。
これはテレビ等のニュースでも頻繁に取り上げられましたので記憶にある方も多いでしょう。
2月だけでも約4000品目を超えるモノが値上がりしたことが報じられ、国民からは「またか。勘弁してくれ」という声が聞かれます。

しかし値上げの波はこれで終わりではありません。
今後もしばらくは値上がりが続く予想で、今年1月~4月を通しては約7千品目が値上げされる見通しです。
品目によっては1回、2回だけでなくすでに数回の値上げが実施されているものもあるので、頻繁に購入する品目では家計負担が重くなります。
電気ガスなどのインフラ料金も値上がりが顕著ですから、個人の家計はもちろん、事業者目線でも大きな負担となります。
一般社団法人エネルギ―情報センターの調査によると、2021年の10月と2022年の同月時点における電気料金の平均単価を比較した調査として、約151%もの値上がりを見せています。

ただ電気については政府の支援策が導入されていることから、今年2月時点では一時的に料金負担が軽減されているところもあります。
電力会社にもよりますが、早いところでは今年の1月から電気料金の抑制に向けて調整がなされることになり、1月、2月あたりから一時的に電気料金が軽減する所が出るはずです。
ただしこれはあくまで一時的な事象で、今年4月からは電力会社がさらなる値上げに踏み切ることが予想されることから、政府の補助施策と拮抗しつつ、電気料金は徐々に負担増の方向に傾くと予想されています。
事業者にとって政府の補助施策はありがたいものですが、値上げ圧力を完全に封じ込めるだけの力は残念ながらないようです。

■経営にはどのような影響が出ている?

電卓とパソコンを触る経営者の手元

さらに事業者目線で値上げの影響がどう出ているか見ていきます。
ここでは、あるリサーチ会社が行った事業者に対する値上げの影響調査の結果を参考にします。
この調査では全国の経営者千人超に対し、WEBアンケート方式で値上げの影響やその影響に対する自社の対応行動の質問がなされています。

調査対象の概要を大枠で捉えておくと、業種として多いものから5位まで「製造業(14.0%)」「建設業(13.5%)」「不動産業(10.4%)」「企業向けサービス業(9.4%)」「情報通信業(8.6%)」となっています。
従業員数は多いものから5位までを挙げると「9人以下(40.9%)」「10人~49人(25.7%)」「50人~99人(9.5%)」「100人~499人(12.5%)」「500人~999人(5.9%)」となっています。

概観として中小企業から中堅、一部大手までバランスよく抽出されているので、国内企業全体として平均に近い回答結果と捉えて差し支えないでしょう。
この調査によると、運営コストの増加から利益が減少したと答えた経営者は30.9%、売り上げが減少したと答えた経営者は27.8%となっています。
影響がないと答えたのは27.9%で、残りが売り上げや利益が増加したと答えています。
値上げによる負の影響を受けた割合を見ると60%弱となっているので、少なくとも半数以上の企業が経営的にダメージを受けていると見ることができます。

さらに、今後の自社の対応方針を問う質問には、40.5%が自社の製品の値上げ(価格転嫁)を考え、26.8%が仕入れ先との価格交渉、25.5%が経費削減を考えていると回答しています。

■今後も続くコスト増にどう対応する?

お金を大事にもつ女性の手

燃料代や様々な資材、資源の価格上昇が今後も続くと見込まれることから、事業運営にかかるコスト負担も上昇傾向が続くと予想されます。
これを受けて自社ではどのように対応していくのか考えておく必要があるでしょう。
代表的な対処法は以下のように複数あり、組み合わせることで効果的な対策となります。

①出費の抑制

事業の根幹に関わる出費は致し方ないとして、社内で無駄な出費がないか改めて点検してみましょう。
特に料金値上げが著しい電気代については、こまめな消灯を社内に徹底すると良いでしょう。
仕入れ先との価格交渉や仕入れ先の再検討なども有効です。
効果が低いとみられる宣伝費や交際費などの見直しも行いましょう。

②節税

これまで節税対策についてあまり積極的でなかった場合、税理士などの専門家の知恵を借りて節税点検を行うことも非常に有効です。
経営者は税金方面を忌避しがちで、できるだけ考えないようにしている人が多いと思います。
顧問税理士がいなくてもスポット的に節税相談に応じる税理士が増えているので活用しましょう。

③価格転嫁

一般的に国内企業は価格転嫁を極力控える傾向にありますが、コスト増が深刻になれば価格転嫁は避けられません。
国内の様々な値上げラッシュに鑑みれば、価格転嫁は許容されると見て良いと思います。
食品等であれば値段を変えずに内容量を少なくして消費者目線の負担感を押さえる、いわゆる実質値上げも検討に値します。

■まとめ

まとめ

本章では昨年から続く値上げの動向や経営に対する影響、その対策について見てきました。
ロシア・ウクライナ紛争もしばらく続く見通しで、燃料や食料品をはじめ多方面で落ち着きを取り戻すことはしばらくできそうにありません。
国内では今後も経営面で様々なコスト増の負担が増すと予想されます。
政府の手厚い支援を期待したいところですが、目の前の危機に対処できるよう、各社、各企業でどのような対策を取れるか考えていきましょう。