経営者は自分の会社を運営するにあたり様々な苦労や苦難に遭遇しますが、それでも経営者として続けていけるのは苦しみを乗り超える充実感を得られるからでしょう。
もちろん会社のかじ取りは簡単ではありませんから、もし事業に失敗すると経営から退場しなければなりません。
事業を続けていけるかどうかは経営者の手腕にかかっているわけです。
本章では事業を成功に導くために経営者に求められる役割について考えてみたいと思います。

■ドラッカーが示す経営者の役割とは?

ドラッカーが示す経営者の役割とは?

ビジネスや経営について学んだり研究したりする時、資料を読み込んでいると必ず出会う名前があります。
ピーター・ドラッカーの名前はあまりにも有名ですから、経営者以外の方でも聞いたことがあるという人は多いと思います。
ドラッカーは経営学やマネジメント論を提唱した経営学者です。
ビジネスをされている人であれば知らない人はいないといって良いくらいの有名人ですね。
ドラッカーが考える経営者の役割とはどのようなものか見てみましょう。

①事業の決定

自社が展開するビジネスの内容や参入する市場について決定することです。
事業の内容を決めるにあたってはただ単に自分がやりたいことをやるというだけではなく、それが社会にどう役立つのかという視点で考えないとうまくいきません。
社会に求められている内容でなければ需要にマッチしないので、無理やり進めても成功にはたどり着けません。

②資金配分の決定

経営者の大事な仕事である資金調達や、調達した資金の使用方法について戦略的に考えることです。
商品の開発費用や人材の獲得、育成など資金の用途は多岐にわたります。
適切に資金源を分配できないと早々に行き詰ってしまいます。

③人材配置の決定

自社戦力である従業員の特徴や強みを理解したうえで、適材適所に人材を配置します。
一人一人の従業員が最大の成果を上げることができれば、会社のポテンシャルを最大限に引き出すことができます。
以上、ドラッカーが提唱する経営者の役割をごく簡単にですが捉えてみました。
次の項ではドラッカーが唱える経営者の役割に加えて、現実の会社経営において求められる役割をプラスして見ていきたいと思います。

■実際の経営現場で求められる経営者の役割

実際の経営現場で求められる経営者の役割

④社員の育成

近年は特に国内で人材不足が深刻化しています。
昔は需要と供給のバランス上で採用側が圧倒的に強い時代もあり、「代わりはいくらでもいる」と社員が使い捨てのように扱われた時代もありました。
今では立場が逆転している情勢で、どうにかして確保した社員を大切に育てる姿勢が求められています。
効率的な社員教育を可能にする体系的な育成環境を整備するのも経営者の仕事です。

⑤社員の評価

会社組織は複数の社員で構成されますから、適正な社内評価の元で昇進や昇給を実施していかないと不公平感が生まれます。
一人一人の社員を育てることの他に、組織全体として機能させていく視点で社員評価を行うことも大切な要素になります。

⑥事業戦略の策定

社員は与えられた目の前の仕事をこなしてくれますが、目の前の課題だけでなく中長期的な目線で事業戦略を描くことが経営者の仕事になります。
一つのプロジェクト単位よりももっと先、会社の未来を考えるのは経営者の役目です。

⑦労働環境の整備・改善

働く環境が良くないと社員のモチベーションは落ち生産効率が悪くなります。
労働環境が悪いと健康を害したり病気になって欠勤、あるいは離職ということにもなりかねません。
労働環境整備も経営者が担うべき役割です。

⑧責任の引き受け

会社が日常の業務を行うにあたっては、すべての事項を代表者が一つ一つ目を通すということは少ないと思います。
現場で決定できることは現場の社員がその権限の中ですると思いますが、最終的にその責任は会社の代表者である経営者に集約されていきます。
何かあれば最終的な責任は会社の代表者が負うこととなり、従業員に責任を押し付けることはできません。
世間では色々と会社の不祥事がマスコミ沙汰になっていますが、やはり最終的に頭を下げるのは経営者です。
結局、不祥事を起こした社員を抱える会社に責任があるということで、社員教育や育成がうまく機能していないとそのような結果を招いてしまいます。

⑨取引先との関係構築

会社は多方面の取引先と関係を持つことになりますし、ビジネスパートナーと共同で事業を行うということもあるかもしれません。
こうした利害関係を持つ機関と良好な関係を構築することも経営者の大きな役割になります。

■役割を果たすために求められる資質やスキル

役割を果たすために求められる資質やスキル

では経営者に求められる役割を果たし、会社を成功に導くためにどのような資質やスキルが必要になるか見てみましょう。

①コミュニケーション能力

取引先など関係各所とより良い関係を築くには高いコミュニケーション能力が必要です。
相対するのが社内の人間であっても社外の人間であっても、相手に合わせた適切なコミュニケーションを取れるスキルが求められます。

②リーダーシップ

コミュニケーション能力が高くても、リーダーとして他を統率できないと組織を引っ張っていくことはできません。
例えば個人でコンサルタント業をするような人はリーダーシップはそれほど重要ではありませんが、組織を率いる会社経営者はコミュニケーション力だけでなくリーダーシップも必要です。

③財務や会計の知識

直接的な資金調達の場面でも必要になりますが、資金を確保した後でその資金をどう活用するかは財務や会計の知識が無いと検討できません。
財務分析を行って使途や金額を検討する際に財務や会計知識が必要になるので、最低限の知識は身に着けておきたいものです。

■まとめ

本章では経営者に求められる役割について見てきました。
ドラッカーが提唱するものに加えて、現代の現実的な経営で求められる役割についても取り上げて見てきましたが、経営者に求められる役割は多岐にわたります。
事業経営では様々な問題や課題に直面しますから、経営者はその一つ一つに丁寧に向き合って解決策を模索していかなければなりません。
必然的に求められる役割も広範囲になります。
経営者の仕事は簡単なものではありませんが、課題に向き合い乗り越えていくことで成長でき、これが人間的な幸福感つながっていくのだと思います。
簡単に解決できない課題もあると思いますが、真剣に向き合って一つずつ乗り越えていきましょう。