国内の中小事業者における事業承継の問題はかなり前から表面化しています。
事業承継はそれ自体難しい課題である上に、2025年問題も目前に迫っていますから、事業承継はまさに国全体にとって喫緊の課題と言えます。
本章では2025年問題でどのような心配がされているのか、後継者不足の現状や原因と共に見ていきます。

2025年問題とは?

2025年問題とは?

まずは2025年問題とはどのようなものか簡単に押さえましょう。
この問題は事業承継だけに関係するものではなく、広く社会全体に関係します。
簡単にいうと人口減少と高齢化がさらに深刻化して、様々な悪影響がでてくるというものです。
もう少し踏み込むと、ベビーブームで大量に産み落とされた、いわゆる団塊の世代が75歳以上になり、超高齢社会がさらに進むことで、国を支える現役世代の負担が増し、色々と歪が生じるという社会問題です。
例えば今でも負担が叫ばれている社会保障費がさらに増すのではないか、社会保障の仕組み自体が存続できなくなるのではないか、医療や介護などのサービスを受けられなくなるのではないか、などの心配が出ています。
社会全体、国全体にとっての大きな心配事なわけですが、人口減少は労働力不足にも拍車を掛けますから、事業承継の方面でもやはり課題が生じてきます。
こちらの方面では後継者不足の課題解決がより難しくなるのではないか、廃業がもっと増えるのではないかということが心配されています。

国も対応はとっているものの・・

国の対応

事業承継は今現状でも難しい課題として認識されていて、国も様々な施策を打って事業承継問題に取り組んでいます。
会社を後継者に引き継ぐにあたっては、株式などの事業用資産を後継者に集中して引き継がせることが相続のルール上難しい側面があるのですが、国は法改正を行って幾分の調整がしやすい環境を作っています。
ただ実際のところ、この仕組みは承継問題を抱える当事者にとって使い勝手が良いとは言えません。
贈与税、相続税の面で優遇してくれるのはいいとして、手続き面で手間が多く、専門知識が必要なため法律や税務に詳しくない当事者だけで対応するのは難しいことが多いと思われます。
専門家にお金を払ってサポートしてもらわないと国のそうした施策も十分活用できないのは、困っている当事者に親切とは言えません。
あまり細かい要件を設けず、仕組みももっとシンプルにしてもいいのではと思いますが、税制の公平性を考えると国としてはそうもいかないのでしょうね。
ともかく、事業承継問題が深刻化すれば雇用喪失が進み、国力の低下にもつながるのですから、今以上に危機感を持って対処していかなければなりません。

事業承継が簡単にいかない理由

事業承継が簡単にいかない理由

事業承継の方法には親族に後継者になってもらう親族内事業承継の他、適切な人物がいなければ既存の役員や社員などに後継者になってもらう親族外事業承継、M&Aによって会社を売却する第三者承継などがあります。
親族に後継者候補が居れば希望が持てますが、有望な人物がいたとしても育成にはそれなりの時間がかかります。
最近は候補がいたとしても本人が会社を引き継ぐことに消極的だったり、明確に拒否されることも多くなっています。
中小企業の場合、経営者といっても自由さや華やかさよりも会社を経営することの責任や色々な縛りの方が強く映り、魅力的でないこともあります。
会社は多かれ少なかれ負債を抱えているのが普通で、経営者が会社の連帯責任を負うことが多いため、これを嫌って会社を引き継ぎたくないと考える人が多いのです。
現経営者自身も、かわいい子や孫に会社の負担を背負わせるのは忍びないと考えるケースも多く、思うように会社の引き継ぎが進まないわけですね。
M&Aで第三者への売却が叶えばラッキーといったところですが、M&Aは買い手にとって魅力がなければ実現しません。
中小企業の場合、「ぜひ買わせてほしい」といわれるようなケースは稀で、ほとんどの場合売りたくても簡単には売れないのが実情です。
相当突っ込んだ交渉が求められ、売る側、買う側双方が綿密な調査の元で相手の信用等をチェックする必要があり、そこには法務、税務などの専門家も絡んできます。
専門知識が無いとM&Aを進めることが難しいということも、解決を用意ではないものにしている要因の一つです。

国が経営者保証ガイドラインを整備

国が経営者保証ガイドラインを整備

国は税制上で優遇を設けるなどの施策を取っている他、上で見た後継者が責任を嫌って会社を継いでくれないという問題にも対応策を打ち出しています。
経営者になるには会社の連帯保証人にならなければならず、その金額は個人では負い切れない金額であることがほとんどのため、万一会社が倒産すれば経営者も個人の自己破産をしなければならなくなります。
それほどの責任を負うくらいなら経営者はやりたくないと思うのも無理はありません。
その課題に対して国が打った施策が経営者保証ガイドラインの作成です。
一定条件を満たせば代表者保証なしで融資を受けられたり、事業承継を行う際には新たに経営者となる後継者が会社の連帯保証人を引き継がずに済むよう、国が定めたのがこのガイドラインです。
具体的には、以下の要件の全部または一部を満たせば、経営者保証を不要とするように国が金融機関に要請する内容となっています。

・資産の所有や資金の流通に関し、法人と経営者で明確に区分・分離されていること
・財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能であること
・金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されていること

ただしこれはあくまで国の要請であって、金融機関は必ずしも拘束されるわけではありません。
法的な拘束力はないので、代表者保証を求めるかどうかの判断は最終的に金融機関に委ねられます。

まとめ

本章では近く迫る2025年問題と、これに深く関係する後継者不足の現状や課題を見てきました。
人口減少はかなりのスピードで進んでおり、2025年問題の一分野として事業承継の課題に対応が求められているところです。
事業承継は法制、税制などの専門知識が必要で、専門家の助力も必要です。
自治体や商工会などの支援窓口では各種専門家も交えて相談に乗ってくれるはずですので、こうした窓口を活用して解決の糸口を探ってみましょう。