銀行に融資の打診をする際は必ず貸借対照表や損益計算書などの財務諸表の提出を求められます。
これは財務諸表にかかれた数値から様々なことを読み取れるからで、経営に問題がないかどうか吟味し、融資をすべきか否かの判断材料にするために提出を求められます。
経営者としても自社の財務諸表から読み取れる数値(財務指標)を参考にすることで、課題を把握したり問題点の解消につなげることができるので、ぜひ読み取りができるようにしておきたいものです。
本章では経営者が知っておくべき財務指標について解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

■収益性の指標

収益性の指標

最初に見ていくのは収益性に関する財務指標です。
会社が収益を上げられているかどうかの観点で評価する指標を言い、以下のようなものがあります。

①売上高総利益率

売上高に対し売り上げ総利益が占める割合で、自社の製品やサービスがどれだけの利益を生んでいるのかを示します。
売上高総利益率=売上総利益÷売上高×100
業種によって目安の数値はかなり変わり、例えば飲食業であれば55%程度が平均的な目安とされます。

②売上高販管費率

この指標は売上高に占める販売費と一般管理費の割合を示すものです。
管理費の比率が低いほど効率的に収益を生んでいると判断され、売上高販管比率の数値は低いほど収益性が高いと評価できます。
計算式は以下の通りです。
売上高販管費率=販売費および一般管理費÷売上高×100

③売上原価率

コストとなる原価をできるだけかけずに売り上げを出せればそれだけ効果的に収益を生んでいると評価でき、これを確認できるのが売上原価率です。
計算式は以下の通りです。
売上原価率=売上原価÷売上高×100

数値が低いほど望ましいと判断できます。

■安全性の指標

安全性の指標

支払い能力に係るリスクや倒産のリスクなどを判断するための指標です。

①流動比率

概ね1年以内に必要になる支払い債務(流動負債)を短期間で現金化できる資産(流動資産)で賄えているかどうかを示す指標です。
流動比率=流動資産÷流動負債×100
この比率が高いほど短期の支払い能力があると判断され安全性が高いと評価できます。
流動比率は100%を下回るとハイリスクと評価されます。
一般的には120%を超えるのが望ましいでしょう。

②固定比率

固定資産が自己資本に対してどれだけの割合を占めているかを示す指標です。
固定比率=固定資産÷自己資本×100
数値が低いほど安全性が高いと評価でき、100%未満であればひとまず安心できます。
数値が高いと固定資産に対する投資が過大になっていることが示唆されます。

③自己資本比率

返済義務のない資本が会社の資産のうちどれだけ占めるのかを示す指標です。
安定した経営を目指すにはこの指標が高くなるのが理想で、50%以上であれば好印象を得られるでしょう。
計算式は以下の通りです。
自己資本比率=自己資本÷総資産×100

■活動性の指標

活動性の指標

どれだけ会社の資産を活用して利益を上げられているかを示すのが活動性の指標です。
少ない資本で利益を上げられていれば高評価となります。

①総資本回転率

総資本を有効活用できているかを示す指標で、計算式は以下の通りです。
総資本回転率=売上高÷総資本
この数値は「1」が基準となり、数値が高いほど高評価を得られます。

②売上債権回転率

売掛金をどれだけ効率的に回収できているかを示す指標です。
数値が大きいと売掛金を早く回収できていることを示します。
計算式は以下の通りです。
売上債権回転率=売上高÷売掛債権

③在庫回転率

事業期間において何回在庫が入れ替わったのかを示す指標で、計算式は以下の通りです。
在庫回転率=売上高÷棚卸資産
一般的にこの数値は高いほど良いとされます。

④固定資産回転率

保有する固定資産がどれだけ利益を生んでいるかを示す指標です。
固定資産は利益を生みだす母体となるので、固定資産への投資を適切に行えているかどうかの判断材料になります。
固定資産回転率=売上高÷固定資産
業種によって目安の数値は変わりますが、製造業などは2.5程度の数値が平均的な目安になるでしょう。
数値が低い場合は固定資産に過大な投資をしていることを示唆します。

■生産性の指標

生産性の指標

かけているコストがどれだけ利益に結び付いているかを示すのが生産性の指標です。

①労働生産性

雇用する労働者が一人当たりでどれだけ生産性があるのかを示す指標です。
この指標をみることで企業が付加価値を生み出すためにかけた人件費が有効に寄与しているかが分かります。
労働生産性=付加価値額÷従業員数
付加価値は企業が仕入を行って製品を生産した際に新たに生み出した価値のことです。
付加価値の計算方法は二つあり、一つは控除法と言って以下の計算式で算出します。
付加価値 = 総生産高 - 外部購入価額
外部購入価額は材料費や外注加工費などが入ります。
もう一つは積上法で、人件費や減価償却費、賃借料、当期純利益などを合算して積み上げていく方式です。

②労働分配率

この指標は生み出された利益がどれだけ人件費に回されているかを示すものです。
労働分配率=人件費÷売上総利益×100
数値の目安は50%で、高すぎても低すぎても良い印象を与えません。
数値が高いと人件費がかかり増しになっていることを示し、効率的な人事管理ができていないと推認されます。
逆に数値が低いと安い賃金でこき使っているように受け取られてしまいます。

③資本生産性

保有する資本がどれだけ効率的に利益を生んでいるかを示す指標です。
資本生産性=付加価値額÷有形固定資産額
設備の稼働率を上げることで生産性が高くなります。

■成長性の指標

成長性の指標

過去から現在までどれだけ企業が成長したか、これからどれくらいの成長が期待できそうかを示す指標です。

①売り上げ増加率

前期と当期で売上高がどれくらい増したかを示す指標です。
売上増加率=(当期の売上高-前期の売上高)÷前期売上高×100
増加率が高いほど企業が成長していることを示します。

②経常利益成長率

経常利益が年あたりどれだけ増加したかを示すものです。
経常利益成長率=(当期の経常利益-前期の経常利益)÷前期経常利益×100
この数値も高いほど好印象です。

③総資本成長率

総資本の年あたりの増加度合いを見る指標です。
総資本成長率=(当期の総資本-前期の総資本)÷前期総資本×100
基本的には数値が高いほど好印象ですが、資本の中身に借入金や在庫が多く入ってくると良くありません。
総資本が増えた理由にも着目する必要があります。

■まとめ

本章では経営者が知っておくべき財務指標について見てきました。
普段は自社の財務諸表も行政庁などへの提出時にちらっと見るだけで詳しく読み込んだことが無いという経営者の方も意外にいらっしゃるようです。
読み取りができると自社の評価を自身で行えるようになり大変便利ですので、ぜひ読み取りができるようにしたいものです。