国内の人手不足はかねてから叫ばれており、募集を掛けても人材が集まらないと嘆く経営者の方は非常に多いです。
業界によっては2024年問題の渦中にあって相当苦労されていることでしょう。
苦労してせっかく獲得した人材も、すぐに辞められてしまっては困ります。
実際、近年は早期離職が多く発生していることが指摘されているので、企業の努力によって何とか食い止めなければなりません。
本章では従業員の離職を防ぎ、定着率を上げる方法について見ていきますので、ぜひ参考になさってください。

定着率とは?

定着率とは?

今回のテーマとなる定着率ですが、イメージ的には従業員が会社を辞めずにいる率ということで理解がしやすいと思います。
ただ公的な指標で定着率という指標はなく、代わりに離職率という指標が公表されています。
離職率は勤めている会社を辞めた人の率ですから、離職率の反対が定着率と考えることができます。
これを踏まえて、現状日本国内の離職率、定着率はどうなっているか見てみましょう。

日本の離職率の現状

日本の離職率の現状

令和4年の離職率を見ると、全体の離職率が15%となっており、この逆を捉えると定着率は85%ということになります。
離職率が高い順に業界別を見てみましょう。

1位が宿泊業、飲食サービス業で離職率は26.8%、裏を返して定着率は73.2%
2位がサービス業で離職率は19.4%、定着率は80.6%
3位が生活関連サービス業と娯楽業で離職率が18.7%、定着率は81.3%
4位が医療、福祉で離職率は15.3%、定着率は84.7%
5位が教育、学習支援業で離職率は15.2%、定着率は84.8%

以上のようになっています。
大体10人雇えば1人~2人くらいは辞めてしまうということが伺えますね。

人材が離れてしまうのには個人的な事情の他にもいくつか理由が考えられます。
以下で見てみましょう。

①給与面の不満

単純に給料が少ないということで、一昔前までは不満の上位に上がっていました。
最近は給与額よりも他の不満を多く聞くようになっています。

②福利厚生の不足

住宅手当などの福利厚生が充実していると社員は安心して労働に従事できます。
家族持ちの人は家族手当があると嬉しいでしょう。
福利厚生がほとんどないと、会社は自分を大事に思ってくれているのだろうかと不安になります。

③超過勤務や休みの取りづらさ

近年の不満のかなりの部分をしめるのが残業の多さや休みの取りづらさです。
給料は低くてもいいから定時で帰りたい、休みが多い会社の方がいいという声はよく聞かれます。

④人間関係の不満

社内の人間関係は社員のやる気にダイレクトに影響します。
特に上司との関係でギクシャクすると心の安定が損なわれ労働生産性も落ちますし、場合によっては会社に足が向かなくなります。

⑤評価制度の不満

自分の働きを正当に評価してくれないと思えばやる気は当然失われます。
能力があっても不満から働く意欲を無くしてしまうかもしれません。

⑥キャリアアップの不安

若い人は自分のキャリアアップを意識する人が多いです。
・自分はこの会社にいて成長できるのだろうか?
・資格を取りたいが会社が支援してくれない
などの不安や不満があると転職が視野に入ってきます。

⑦仕事内容の不満

聞いていた仕事と違う、不得意な仕事を振られたなど仕事内容に強く不満を持つと離職につながります。
採用時にきちんと仕事内容を伝えてお互いに共有が図られていないとミスマッチが起こり、入社後に不満を持たれることになります。

定着率を上げる方法は?

定着率を上げる方法は?

では離職をさせず定着率を上げるにはどのような方策があるか見ていきます。

①人気のある福利厚生の導入

できれば幅広く福利厚生を充実させるのがベストですが、既存社員や入社を希望する人に直接聞き取りを行い、望まれている福利厚生を導入しましょう。
とくに入社希望者からの聞き取りは新規採用者のやる気を直接引き出せます。

②インセンティブの導入

給与を十分に上げてやることができれば当然社員は喜びますが、簡単にはいかない企業が多いでしょう。
難しい場合は成果報酬制度を導入し、成果を上げた都度追加で報酬を支払うということもできます。
やる気アップにつながるのでぜひ検討しましょう。

③働きやすい労働環境の整備

会社の風通しを良くして人間関係のトラブルを避けられる労働環境整備が求められます。
フリーアドレスを導入して固定席を無くすなどの取り組みは一定の成果を上げています。
人事評価の基準を明確にして社員の貢献を昇進や昇給にしっかり反映させる取り組みも求められます。

④ワークライフバランスを重視

残業は極力なくす、休みを取りやすくするなどワークライフバランスを意識した人事は近年重要性がさらに増しています。
基本的に今の人は自分の生活>会社なので、会社の束縛が強いと感じるとすぐに辞めて別の道を探しにいってしまいます。
会社の生産力を落とさない範囲ギリギリで、社員の休みを多く確保してやる姿勢が必要です。
できるだけ定時で帰れるように仕事の効率を上げられるよう、無駄を省く視点も求められます。

⑤研修の充実や資格取得の支援

キャリアアップを重視する若者が多いことに着目すると、自身が成長できるように後押ししてくれる会社はありがたいはずです。
キャリアアップにつながる研修を施したり、資格取得を考える社員には成功時に報奨金を払うなどの支援策が有効です。

⑥採用時の工夫

双方のギャップを廃除するため、採用面談などの際には社内の実情を正確に伝え、脚色したりしないことが大切です。
自社をよく見せようと脚色すると入社後に「全然違うじゃん」となってしまうので、多少厳しめに伝えておく方が後のトラブルを避けられます。

⑦ライフプランニングの支援

上で見て見たものにプラスして、資産形成のアドバイスや年金に関する相談に乗れる体制などライフプランニングを支援できる体制があると社員はとても喜びます。
会社を定年まで勤めた後の人生までサポートしてくれるのは大きな安心につながります。
社内でFPの資格を持つ人をサポート要員に選任したり、専従者として活動してもらうこともできます。

まとめ

本章では従業員の離職を防いで定着率を上げる方法について見てきました。
従業員の離職は会社にとっても従業員本人にとっても負担がかかることですから、できるだけ防ぐ手立てが必要です。
働き手である従業員が望む雇用環境を整えることで定着率を上げることができるので、可能な施策をぜひ検討してみましょう。