経営者の仕事の一つに事業資金の確保があり、資金に不足が出る場合は早めに資金確保に動かなければなりません。
企業の血液ともいわれる事業資金の確保は非常に重要で、資金ショートを起こせば一発で倒産の危機に陥ります。
経営者に課される課題の中でも最も重要なものですので、この回では資金調達の本質や知っておくべきポイントについて押さえていきます。

目的によって資金調達手段は変わる

目的によって資金調達手段は変わる

資金調達は企業経営上で必要となる資金を確保することで、下で見るようにいくつかの手段があります。
具体的な方法を探る前に資金調達の目的をはっきりさせることが大切で、その目的によって検討するべき資金調達の方法が変わってきます。
資金調達が必要になる場面や理由は色々考えられますが、代表的なものを挙げると以下のようなケースが考えられます。

・自社の入金と支払いのタイミングを整理したところ、一か月後に仕入れにかかる支払いの資金が足りなくなりそうだ

・売掛先が倒産し予定していた入金が無くなってしまい、運転資金に不足が出る

・輸送用のトラックが故障して修理費用が必要になった

・事業拡大や事業転換で資金が必要になった

・必要な納税資金が足りない

Etc

資金が必要になる理由は色々ありますが、重要なのはその目的をはっきりさせることと、資金確保までに時間的余裕があるのかないのか、そしてどのくらいの資金が必要なのかということを整理することです。
経営者としてはできるだけ将来の資金不足を予知できるようにしておきたいので、資金繰り表を作って整理しておくことが望まれます。
しかしそれでも予期しない資金需要が発生することもままあります。
次の項では資金調達の手段としてどのようなものがあるのか見ていきます。

資金調達の手段は大きく3つある

資金調達の手段は大きく3つある

資金調達の方法は大きく以下の3つの手段に分かれます。

①資産の現金化によるもの

資金需要が発生した際、会社が保有する現預金で賄えれば良いですが、現預金が足りない場合は他の資産を現金化して支払いに充てることができます。
会社の貸借対照表を見てみると左側に資産の部があるので、そこに記載されている資産を現金化することで資金調達が叶います。
資産の部は流動資産と固定資産に分けて記載されているはずですので、急ぎの場合は流動資産の現金化を考えます。
流動資産は有価証券や売掛金、自社商品の在庫など比較的換価処分しやすい資産で構成されています。
売掛金を早期現金化すると手数料がかり金銭的には損をしてしまいますし、在庫を無理に安売りして早期現金化を図るとやはり損が出ることは覚悟が必要です。
それでもこの手段を選ぶ場合は資金需要に間に合うよう、早めに流動資産の売却によって現金化を図ってください。
もし時間的に余裕があるようなら、資産の部のうち換金に時間がかかる固定資産の売却も考えることができます。
固定資産には土地や建物などの不動産、自動車、工場機械などの動産類が入ります。
これらは換金に時間がかかるので急ぎのケースでは対応が難しいですが、まとまった資金源となり得るので可能であれば検討しましょう。

②負債の増加によるもの

負債の増加とはつまり借り入れをするということです。
借り入れをすると返済の義務が生じるため、会計上では負債が増加します。
負債の増加はできれば避けたいのが本音ですが、実際にはほとんどの会社で借り入れ無しの経営は実現できていません。
むしろ借り入れを上手に利用することで経営を上手に回しています。
上の①は会社に現金化できる資産が無いと実施できませんし、現金化するまでに一定の時間がかかります。
また手数料や安売りセールの実施などで金銭的なロスも大きくなりがちです。
また①の方法では必要な金額を確実に手にできるとは限らないので、不足が出る場合は借り入れと併用する必要があります。
借り入れは条件さえ合えばすぐに現金を用意できるので、時間的に余裕が無くても速やかに必要金額を用意できます。

③資本の増加によるもの

資本の増加は株式を発行するなどして返済不要の資金を確保することを意味します。
株式会社は株式を発行でき、株主が支払うお金はその会社の資本となります。
資本は借り入れで手にした資金と違って返済の義務は生じないので、安定した運営資金として利用できます。
ただし資本増加による資金調達の実施には時間がかかるため、急ぎのケースでは間に合いません。
また株式発行により資本増加をしたいと思っても、その株式を買ってくれる人がいなければ資金調達は叶いません。
中小の事業者の場合、第三者割当てで外部からの資金調達を図るのは実際問題難しいことが多いと思われます。

手段ごとに生じる経営への影響を理解する

手段ごとに生じる経営への影響を理解する

上で見たどの手法で資金調達をするにしても、その影響についてはしっかりと理解しておく必要があります。
資産売却による資金調達を考える場合、固定資産は事業に必要な資産であることが多いため、その場合は支障が出ないようにリースバックの検討も必要になります。
リースバックとは、対象の資産を売却したうえで、以後は買い手に賃料を払って借り受けて使用させてもらうものです。
売却でまとまった代金が入るので、これを必要な支払いに回します。
所有権が買い手に移るので、もし賃料の支払いができなくなれば継続使用が叶わず、事業に支障が出ます。
負債の増加による方法を取るなら、利息を含めた返済が必要になります。
期日までに確実に返済できるように返済スケジュールを見積もる必要があります。
資本増加による手法を取る場合、株式を購入した投資家は株主となるので、経営に一定の口を出す権利を得ることになります。
会社側としては経営の自由度が落ちることになりかねないので、この影響を考えた上で実施を検討することになります。

■まとめ

本章では資金調達とは何か、経営者が知っておくべきポイントについて見てきました。
資金調達は事業に必要となる資金を調達することですが、経営者としてはまず資金が必要になる理由や金額、時間的な切迫度合いなどを把握して、これに見合った資金調達の方法を考えることになります。
資金調達の実際の手法は色々ありますが、本質としては今回見てきた3つの手段のどれかに分類されます。
経営への影響も考えながら、ケースに応じた適切な資金調達ができるように努めてください。