「貯蓄から投資へ」のスローガンが呼びかけられるようになったのは大分前ですが、元々日本人は投資に対する意欲が薄いとされ、リスクの少ない預金資産に多くの比重が置かれている現状がありました。
その現状は今でも全体的には変わっていないものの、国民の間に徐々に投資に対する意欲が見られるようになり、また金融リテラシーの向上に意欲を見せる人が増えてきた印象があります。
投資は事業者目線としてもありがたいので、今後も投資意欲が向上するような施策を講じてもらいたいものです。
この回では投資にあまり詳しくない人でも利用しやすいと思われる投資信託について、基礎知識から分かりやすく解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

■投資信託とは?まずはイメージから捉えよう

NISAとIDECO

例えば株式投資であれば、どの会社の株を購入するか検討し、利益を生みそうな株を選んで購入することになります。
投資信託は個別の投資対象を選ぶのではなく、また投資家が自分で具体的な投資対象を選択する必要がありません。
投資信託では、投資家が拠出した資金を専門家が采配の上で運用を行います。
多くの投資家から集めた資金を投資信託会社が運用し、これによって発生した利益を投資家に還元するというのが投資信託の基本的なイメージです。
投資の対象は個別の対象に依存せず、株式や不動産、債権などに分散させることができます。
これによりリスク分散が可能になり、投資家はリスクを避けた投資が可能になります。
投資信託は投資知識がない人でも利用できるのが大きな利点ですが、これを可能にしているのが「信託」の仕組みです。
信託とは自らの財産を“信”頼できる人に“託”すという意味ですが、加えて運用をまかせられるのが投資信託です。
ファンドマネージャーと呼ばれる専門家が利益を出せそうな投資対象を選んでくれるので、投資家は知識が無くても投資が可能になるわけです。

■投資信託の登場人物及び相互の関係

相関図イメージ画像

投資信託では複数の登場人物が関係してきます。
それぞれの立場と相互の関係を掴んでいきましょう。

①投資家(受益者)

自らの財産を預けて投資信託を行う人で、運用した財産から発生する利益を受け取る受益者の立場にもなります。
投資家は下で見る委託者(投資信託会社)もしくは販売会社に申込金を支払い、運用された利益である分配金などを受け取ります。

②投資信託会社(委託者)

投資家から財産を預かり運用の指図を行います。
投資家に対し証券を発行し目論見書や運用報告書の発行を行います。
投資信託会社は、下で見る信託銀行に対して「委託者」となることを意識すると分かりやすいです。

③販売会社(銀行や証券会社など)

投資家が投資信託会社から直接証券を購入する直販パターンの他、販売会社が証券販売の窓口として一枚噛むパターンもあります。
投資信託会社は一般的に窓口となる店舗を有していないので、銀行や証券会社に販売窓口を代行してもらうことが多くなります。
この機関は証券の販売を代行する立場で、資産の運用には関わりません。

④信託銀行(受託者)

投資信託においては投資家の財産を預かるのは信託業務を営なむ銀行でないといけないルールになっています。
信託銀行の任務は信託財産の保管と管理です。
委託者たる投資信託会社は信託金を信託銀行に預け、信託銀行に対し運用の指図を行います
信託銀行はその指図に基づき株式や債券などを購入します。
そして利益が出れば投資信託会社に還元します。
一見複雑に見えますが、資金の流れを追っていくと、資金を預ける方面では投資家→投資信託会社→信託銀行となり、運用利益の分配方面では逆に信託銀行→投資信託会社→投資家となります。
投資信託会社が預かった財産を直接管理、運用できればもっとシンプルになるのですが、「信託」という行為は預かる財産の厳重な保管が求められるので、一般商社たる投資信託会社に任せることができず、信託銀行の存在が必要となることから、このような形になってしまいます。

■投資信託のメリット

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ここでは投資信託のメリットを見ていきます。

①知識が無くても投資が可能

一般に株式投資や不動産投資などはその方面の知識やノウハウが無いと怖くて行えませんし、無理に進めると大きな損を出してしまう恐れがあります。
投資信託は投資信託会社のファンドマネージャーに運用を任せられるので、プロの目で利益を出せそうな投資対象を選んでもらえます。
投資を勉強して知識やノウハウを身に着けるには一般的にかなり時間がかかるので、その手間や時間を掛けずに投資に乗り出すことができるメリットがあります。

②リスク分散ができる

投資信託ではファンドマネージャーが複数の投資対象を見繕って適切に資金を投入してくれます。
複数の資産に分散投資ができるためリスク分散が図られる形です。
もし一つの銘柄で損失が出ても、他の資産でカバーできるため万が一の際のリスク低減が図られます。

③少額から始められる

一般的な株式投資と比べると少額から始められるのも投資信託の魅力です。
プロに任せられるといってもやはり心配なところともあるでしょうから、初めて投資を行う人にとって小額から始められるのは安心できます。
目安としては5000円程度から始めることができるので、お小遣いで運用してみて投資の感覚を掴んでみるのもお勧めです。

■投資信託のデメリット

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投資信託にはデメリットもあります。
銀行預金のように元本が保証されないので、運用の結果元本割れを起こしてしまうリスクがあることには理解が必要です。
また運用には手数料がかかるので、発生した利益をまるまる享受できるわけではありません。
手数料に関しては不透明になりがちなので、投資を始める際にしっかり確認する必要があります。
また投資対象となるファンドは種類が多いので、主体的に投資対象を選ぼうと考えている人にとっては選択肢が多すぎて選べないといったこともあるかもしれません。

■まとめ

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この回では投資信託とはどのようなものか、基本的な仕組みやメリット、デメリットなどを見てきました。
投資の知識が無くても始められる投資手段として代表に上げられる手法の一つで、リスクをできるだけ避けつつ少額から始められるなどのメリットがあるので投資初心者にお勧めできます。
安全性が高いものの、元本割れのリスクはあることや手数料の負担については理解したうえで検討してください。