ビジネス展開を考えるうえで、法人を立ち上げればよりダイナミックな経営が可能になります。
信用面でも格段の違いが出るので、ビジネスが軌道に乗ったら法人成りを考えることが多くなります。
法人の経理や決算は個人と違い非常に複雑で手間がかかるので、一般的には税理士にお願いすることが多いですが、やはり費用がネックになります。
本章では法人決算で税理士を使わず自分でやる場合の注意点について解説していきます。

■個人事業と法人の決算の違い

法人設立イメージ画像

法人の決算は個人事業のそれとはそもそもの目的が異なります。
個人事業の場合は所得税などの税金をしっかり納めるために決算処理が必要になり、この点は法人も同じです。
しかし法人の場合はそれだけでなく、株主などのステークホルダーに企業の成績を開示するという重要な役割があります。
そして成績の開示は正確性を期さないと、投資家の利益を害することになりかねません。
法人の決算は責任の幅や重さが個人とは違ってくるわけです。
そしてより正確な決算とするために、会計のルールも個人とは違ってかなり細かくなります。
個人事業の会計も一般の人から見れば分かりづらいですが、個人事業の決算に慣れた人でも法人の会計ルールは全く別次元のものに映り戸惑うことになります。
当然、決算書としてまとめる場面でも分量が多くなり、個人では数枚で済んだものが法人では数十枚の分量に膨れ上がります。
形式的なところでは決算の期限も異なり、個人事業の場合は必ず年末の12月31日に締め、翌年の3月15日までに申告、納税処理を行うところ、法人の場合は会社ごとに決算期が異なり、設立時に設定した事業年度の翌日から二か月内に申告、納税の処理を行います。

■税理士を使わないメリット

確定申告書イメージ画像

法人決算は責任が重くなるので気が滅入りますが、これを自分でやることは大きなメリットがあります。
税理士に手続きを依頼する場合、一般的には安くても15万円程度~の費用が掛かるのが普通です。
会社の規模等によっては数十万円~百万円を超えるケースもあり、自分でやれればこの費用をまるまるカットできます。
会計や決算の知識は一度身に着けてしまえば後は運用が利くので、元々数字に強い人は挑戦する価値はあります。
数字が全然ダメという場合でも、仮に家族に数字に強い人がいて経理や決算処理を任せられる場合、家族を従業員として迎え入れることで支払う給料を経費に入れることもできるので検討に値します。

■税理士を使わないデメリットと注意点

デメリットを表す画像

自分でやれればコストカットや節税につながる可能性がある一方、デメリットや注意すべき点が色々あるので確認していきます。

①勉強が必要

法人の決算を正しく行うには複雑な法人会計のルールに従う必要があります。
ほとんどの人はこの勉強から始めなければならず、分厚い専門書を目の前にして辟易することになるでしょう。
要点を押さえて学ぶことができる勉強会などが開かれることがあるので、こうしたものに積極的に参加することでできるだけ手間と時間を節約することができます。
法人会計や決算に関する勉強会は各地の税務署や商工会などが主催することが多いので、WEBサイトなどでセミナー情報を確認してみましょう。

②ペナルティを受ける可能性

法人決算の重要性や責任の重さは上述した通りです。
税務署や株主なども厳しい目線で評価しますから、もし間違った決算報告をしてしまった場合はペナルティを受けることになります。
税金の申告が正しくなされていなければ追徴課税などのペナルティを受けることになりますし、株主に損害を与えた場合は損害賠償の責任を負うこともあります。

③税務調査が入りやすい

税務署目線では、法人の決算は通常税理士が行うことが多く、専門知識を持った税理士が関与して作成された決算書であれば一定の信頼を置くことができます。
それと比べて知識が薄いと思われる素人が作成した決算書だと「何か間違いがあるのが普通だろう」と考えて、より注意深くあらさがしをすることが考えられます。
そして難しい法人決算においてはどうしてもミスが出やすいため、結果として税務調査に入られやすいということが言えます。
これを防ぐには、決算前の会計処理の段階から積極的に税務署に相談して、分からないことをクリアにしながら作業を進めていくと良いでしょう。
税務署も昔と違って今では割と丁寧に教えてくれます。

④節税がしにくい

税理士は節税のプロですから、会計や決算処理を依頼すれば適切な節税のアドバイスを受けられます。
自分でやる場合はだれも教えてくれないので、有利なルールを見逃して余計な税金を払うことになってしまうかもしれません。
分からないことを税務署に聞きながら進めると色々と教えてはくれますが、それは税金を徴収するためですから、節税の情報を積極的に教えてくれることは期待できません。
お得な情報は自分で調べて運用していくしかないのです。

⑤費用的に高く付くことも

自分でやる、あるいは会計に強い家族を活用する場合は上述のようにメリットがあります。
あるいは会計に強い人材を外部から登用して経理部門を担当してもらうということもできます。
ただしこの場合、給料は経費になるとしても、社会保険など雇用にかかる様々な経費が恒常的にかかることになるので、税理士に外部委託するのと比べてかえって高くついてしまうこともあります。
人を雇って担当させるのと税理士に外部委託するのとを比較し、損得を考慮して優劣を判定する必要があります。

■まとめ

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本章では法人決算で税理士を使わず自分でやる場合の注意点やメリット、デメリットなどについて見てきました。
法人決算は個人事業のそれとはそもそもの目的から異なり、責任も重いものになります。
会計ルールが複雑になるため、本業で忙しい人は自分でやるのが難しいことも多いでしょうから、無理して自分でやろうとする必要はありません。
税理士費用を払ったとしても、それで浮いた手間と時間を本業に向けてそれ以上に稼げば全く問題ないわけですし、不得意な会計にストレスを感じるよりは有意義なビジネスライフを送れます。
自分でやることに固執せず、外部のリソースを有効に活用していきましょう